サーフィン小説風メキシコ旅行記

ラ・プンタ

−11「少女は森の茂みへ」

 

「ノー!」金属をこするような悲鳴をあげて、少女は森の茂みに逃げ込んだ。

 バンディードスは、

いなくなった。

 森に隠してあった車

に乗って、走り去っ

た。

 どうやら命は助かっ

たみたいだ。

 ・・・。

 ホッとすると、か

えって恐怖がこみ上げ

てくる。

 バスは動きださない。運転手と助手は、どこかに逃げてしまった。

 デンマークの女性たちは、スウェーデンの老人の怪我の手当をしている。道端に散乱した荷物の中から、自分たちのバック・パックを見つけて、そこから治療に必要なものを出している。

 「申し訳ない。君らを助けることができなくて」

 「そんな。どうかそんなことをおっしゃらないで。あなたは立派です」

 そんな英語が聞こえてくる。

 「しかし、それにしても、ひどい連中だ」

 「警察に訴えましょう。私、あいつらの体液のサン

プルを持ってるわ」

 若い女の一人がハンカチを出した。

 「これがあれば、あの獣どもを裁判にかけてやれる

わ」

 「そうね。でも、まず病院に行って治療を受けま

しょう。歩けますか?」

 「ああ、大丈夫だ」

 老人は立ちあがった。

 乗客たちが動きだした。バスを諦めた者たちが、歩きはじめたのだ。

 闇の中を、とぼとぼと疲れて歩く人の列ができた。デンマークの女性たちとスウェーデンの老人はその列に加わった。

 ただひとり、あの少女だけは動かなかった。

 洗いたてだったワンピースは泥だらけになり、少女は地面にうずくまったままだった。

 大きなラジカセはなくなっていた。

 「だいじょうぶ?」

 何もできなかった申し訳なさから、太郎はできる限り優し

く声をかけた。

 「ノー!」

 金属をこするような悲鳴をあげて、少女は森の茂みに逃げ

込んだ。

 「心配しないで、僕は何もしないよ」

 太郎が近づこうとすると、ガサガサと草の揺れる音が茂み

の奥に走った。それが少女の返答だった。

 くそっ!

 足元に捨てられたサーフ・ボードを、太郎は思いきり蹴飛ばした。ボードの下から、ベッド代わりに使われて折れたフィンが現れた。

 しばらくして、太郎も歩きだした。

 

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  1. 箇条書き項目キミの探すものは、ココにある!

  1. 箇条書き項目コ、コレが欲しかったんだよ!

  1. 箇条書き項目悲劇を避けるのが一番だけど、ここ一番はAIU保険に頼ってみたら? いろいろなタイプがあります。(広告)