「やっぱり、南は良くないと出てる。良くないことが起きるよ。行かないほうがいいね」
たは南のほうに行くつ
もりだね」
「はい」
「良くないことが起
きるよ。行かないほう
がいいね」
太郎は、ドキリとし
た。
「良くないことって
何だい、エスメラルダ?」
「カードにはそこまで詳しく出てないねえ」
タロウ? 南に行くってのは」
太郎はうなづいた。
「良くないよ、・・・」
エスメラルダが指先でタロット・カードをもてあそびなが
ら言った。
「やっぱり、南は良くないと出てる」
「馬鹿なことをお言いでないよ。あんたの出鱈目で、あた
しのタロウが怖がるじゃないかい」
「何だって! あたいの占いが出鱈目だって!」
「タロウ、この女の当たりもしない占いなんて気にする必要ないよ」
「言ってくれるじゃないか! あたいは、ヨーロッパで生まれた正真正銘のジプシーの女だよ! そのエスメラルダのタロットが、外れたことがあるかい?!」
「あたしだって、オアハカ生まれのれっきとしたメヒカーナさ。そのあたしが言うんだ、タロウ。このジプシーの言うことなんて、嘘さ。行くね。絶対に行くね」
ルピータは念を押すと、エスメラルダから守るように太郎を抱きかかえて出口にむかって歩きだした。
と、ジプシー臭くって
息が詰まるよ」
「いいかい、イン
ディオ女! この子が
今日来るって占ったの
は、アタシなんだから
ね!」
エスメラルダのがな
り声が、背中から聞こ
えた。
「タロウ、あたしの勘とあの女の占いとどっちを信じる? オアハカの女にはね。何でも見通す力があるんだよ」
ルピータは太郎の顔をのぞき込んだ。
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キミの探すものは、ココにある!
コ、コレが欲しかったんだよ!
メキシコに行くのなら、オアハカ州は必ず訪れたいもの。理由は、ここに。
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小説「ソウル・サーフィン(セネガル・カサマンス州カップスキリング岬にて)」
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