サーフィン小説風メキシコ旅行記

ラ・プンタ

−3「ジプシーのタロット占い」

 

そこには、「ジプシー・エスメラルダのタロット占い」という看板だけがあり、窓から別の老婆がこちらを見ていた。

 「ルピータ! ル

ピータなの!」

 太郎は老婆に抱きつ

いた。

 「でも、大きくなっ

たね、タロウ。アタシ

がお前の家で働きはじ

めたときには、まだ坊

だったのにねえ。も

う、立派な少年だ」

 「当たり前だよ。ルピータがウチに来たときには、僕はまだ小学校に入ってなかったもの」

 太郎は老婆にほほをこすりつけた。昔は、よくこうやって甘えたものだ。褐色の肌からかすかに出ている口髭が、太郎の顔に当たった。この感覚も懐かしい。ルピータの口もとが二度、三度とほほに触れた。太郎も、ルピータになら自然とキスを返すことができる。

 「でも、ルピータ。どうして、ここに」

 「知らなかったのかい? あたしの家族はここで店をやっ

ているんだよ」

 「だけど、こんなに早くから、・・・」

 「タロウ、お前を待ってたんだよ」

 「え! ここで、ずっと僕を待ってたの?」

 「馬鹿なことをお言いでないよ。お前がメキシコを離れて

から、何年になる。二年間も、この椅子に座ってることなんて、いくらルピータでもできやしないよ」

 「じゃ、なぜ、僕が今日ここに来るってわかったの?」

 ルピータはにこりと笑って、通路の反対側の小さな店を指さした。

 そこには、「ジプシー・エスメラルダのタロット占い」という看板だけがあり、窓から別の老婆がこちらを見ていた。

 
「おはよう、タロウ」

 と微笑む女の口元には、

歯があまり無かった。

 「エスメラルダとあたし

は、幼なじみ。ここで一緒

に年を取ったのさ」

 「あたしのタロットに、

今日、ルピータが一番会い

たがっている人が東洋から

来るって出たんだよ。坊

や、ちょっと待ってな」

 エスメラルダはさっそく

カードを並べだした。

 表を向いたカードを裏返したり、カードの位置を変えたりして、フンフンとうなずいている。

 

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  1. 箇条書き項目コ、コレが欲しかったんだよ!